親が生きているうちに葬儀を調べるのは不謹慎か

まず、この記事の要点

親が存命のうちに葬儀を調べることへの後ろめたさを扱います。独立行政法人国民生活センターは報告書本文の消費者へのアドバイスで、もしもの時に慌てることのないよう前もって情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておくことを勧めています。

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筆者は本記事で扱うサービスの利用経験・利害関係はありません。本記事は自治体・省庁の公式情報と公開データを整理したものです。

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不謹慎ではありません。独立行政法人 国民生活センターは、葬儀サービスの料金トラブルに関する2026年6月3日公表の報告書本文で、消費者へのアドバイスの1つ目として「もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」と書いています(出典:国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。国の相談機関である独立行政法人が、消費者に向けて「前もって調べておくこと」を勧めている——それがこの問いへの、いちばん短い答えです。

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いま、あなたに起きていること

親が入院した。要介護になった。医師から説明があった。——そして帰り道、スマホの検索窓に「葬儀 費用」と打ちかけて、指が止まる。

親はまだ生きているのに。

縁起でもない。親の死を待っているみたいだ。誰かに見られたら何と思われるか。そう感じて、検索履歴を消した人もいるはずです。

まず、その感覚自体は、あなたが親を大切に思っている証拠です。どうでもいい相手のことを、後ろめたさを感じながら調べる人はいません。罪悪感は、冷たさではなく愛情の裏返しとして生じています。

それでも調べてよい理由は、感情論ではなく構造にある

1. そのときが来てからでは、落ち着いて調べる余裕が残りにくい

この局面がどういう状態かは、国民生活センター自身が報告書本文に書いています。「一般に、残された家族等は、親しい人との死別による悲しみを抱えた中で葬儀の準備をすることになるため、冷静に対応することが難しい状況に置かれがちです。また、ご遺体を速やかに搬送する必要があるなど、短期間で多くのことを決めなくてはいけないこともあります」(同・報告書本文 3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。

つまり、冷静に判断しづらい状態と、短期間に判断が重なる状態が同時に来やすい——これは筆者の印象ではなく、同センターが料金トラブルの背景として公式に挙げている構造です。事前に調べるとは、この負荷の一部を、まだ落ち着いていられる今のうちに引き受けておくことです。

なお、実際に何日で何を決めることになるかは、地域・火葬場の空き状況・家族の事情によって変わります。本サイトでは当日の段取りを 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ に、そのときが近づいたときに今日できることを 親の危篤を告げられたら——今日できる準備と、しなくていいこと にまとめています。

2. 知らないまま迎えた人が、実際に困っている

国民生活センターに寄せられた葬儀サービスの相談は、2019年度の632件から2024年度978件・2025年度917件と増加傾向で推移しており(同センターは「増加傾向で推移しており、年間で900件前後となっています」と表現しています)、相談の52.6%が「高価格・料金」に関するものです(2025年度)。公表されている相談事例には、「広告に記載されていた50万円のプラン」で申し込みたいと連絡したところ「葬儀社からは120万円のプランを提案された」もの(2026年1月受付・60歳代男性)や、「家族葬50万円」の表示を見て依頼したところ「見積書にはプラン名と一式としか記載がなく、明細が書かれていなかった」ため追加費用も発生して「総額で200万円を超え」たもの(2025年11月受付・60歳代女性)があります(出典:件数・割合は同発表ページ、事例の本文は報告書本文[PDF]1.・いずれも2026-08-27に原典で確認)。

同じ発表で国民生活センターが挙げる対策の1つ目が、「葬儀の希望やイメージを考えて情報収集をしましょう」です。報告書本文の解説では「もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」「事前に複数の葬儀社を比較し、内容等をよく確認することが重要です」と述べられています(出典:同・報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認。発表ページ側にはアドバイス4項目の見出しのみが載っています)。つまり、あなたが今やろうとしていることは、公的機関が推奨している消費者防衛そのものです。

3. 金額の規模が、準備なしで向き合うには大きすぎる

葬儀費用の平均は総額118.5万円、形式によって42.8万円(直葬・火葬式)から161.3万円(一般葬)まで幅があります(出典:鎌倉新書「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)」喪主経験者2,000名・2026-08-25に原典で確認)。より新しい第7回〈2026年〉は総額96.73万円、形式別49.56万〜122.01万円ですが、第7回は中央値で第6回の平均とは統計量が異なるため、並べて増減を読むことはできません。

実際、国民生活センターに寄せられた葬儀サービスの相談について「契約購入金額の平均は、年々増加傾向にあり、2025年度は約109万円でした」と報告されています(同・報告書本文[PDF]図4・n=3,762・2026-08-27に原典で確認)。これは相場そのものではなく「相談として持ち込まれた契約」の平均額ですが、100万円前後の金額が動く場面であることは公的な集計からも読み取れます。

100万円前後になりうる買い物を、多くの人は人生で数えるほどしか経験しません。しかもそれを決めるのは、同センターが書くとおり「冷静に対応することが難しい状況」の中です。今のうちに目安だけでも見ておくことは、特別なことでも、先走ったことでもありません。

4. 「調べておくこと」は、親のためでもある

もうひとつだけ。国民生活センターは同じアドバイスのなかで、「どのような葬儀を希望するのか、本人の意向も踏まえて具体的に考え、可能であれば家族等と話し合っておきましょう」と書いています(同・報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。

つまり事前に調べることは、あなたが一人で決め方を抱え込むための準備ではなく、親自身の希望を、親が話せるうちに聞いておくための入口でもあります。それが当日の気持ちにどう働くかは人によって違いますし、迷いが消えると約束できるものでもありません。ただ、「本人に聞いていない」という選択肢だけは、あとから取り戻せません。

罪悪感との付き合い方:ぜんぶ解消しなくていい

ここまで読んでも、後ろめたさが完全には消えないかもしれません。それで構いません。

罪悪感を消してから調べるのではなく、罪悪感を抱えたまま調べていい。 後ろめたさと準備は両立します。

日本の2024年の死亡数は160万5298人で、前年の157万6016人より2万9282人増加しています(出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」結果の概要・2026-08-16確認)。国民生活センターも同じ増加を挙げて「死亡数の増加とともに、葬儀の取扱件数も増加していると考えられます」と書いています(同・発表ページ・2026-08-27に原典で確認)。この件数のなかで、誰がいつ何を調べたかまでは統計になっていません。ただ、年間900件前後の相談が現に寄せられているという事実は、そこで実際に困った人がいたことを示しています。あなたが今調べていることは、異常なことではありません。

なお、「準備しておくべきだ」と言いたいのでもありません。調べる気力が出ない日は、調べなくていい。この記事は「調べてしまった自分」を責めないでほしい、という一点だけのために書かれています。

今夜はここまでで十分:次に読むなら

全部を今夜理解する必要はありません。もし少しだけ先に進むなら、順番は次のとおりです。

  1. 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ(親と少しだけ話してみようと思ったら)
  2. 親の危篤を告げられたら——今日できる準備と、しなくていいこと(そのときが近づいたとき、今日できることを知りたいなら)
  3. 葬儀費用「平均120万円」は本当か——公式料金から積み上げて検算する(お金の実額から先に知りたいなら)

よくある質問(FAQ)

Q1. 親が生きているうちに葬儀社へ相談に行ってもいいのでしょうか? 問題ありません。国民生活センター自身が、消費者へのアドバイスとして「もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」と書いています(出典:上掲・報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。事前相談は縁起の悪い例外行動ではなく、公的機関が消費者に勧めている行動です。

Q2. 調べていることを親に隠すべきですか? 隠しても問題はありませんし、無理に打ち明ける必要もありません。ただ、話せる関係なら、親自身の希望(形式・呼んでほしい人・宗派)を聞けることは大きな助けになります。切り出し方は 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ にまとめています。

Q3. きょうだいに「縁起でもない」と言われました。 感じ方の個人差は埋まらないことがあります。無理に説得せず、「そのときに困らないように調べておく係を引き受けた」と役割の話にすると、価値観の対立になりにくくなります。調べた内容が家族の役に立つかどうかは、そのときの状況や家族の事情によりますが、少なくとも「誰も知らないまま当日を迎える」状態は避けられます。

Q4. 縁起が悪いことをしている気がして手が止まります。 「前もって情報収集し、事前相談しておく」ことは、国民生活センターが消費者へのアドバイスとして書いている行動です(出典:上掲・報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。文化的な感覚と、実務上の合理性は別のものです。両方を抱えたままで大丈夫です。

Q5. 具体的に何から調べればいいですか? まずは「お金の実額」「当日の段取り」「誰に連絡するか」の3つからで構いません。お金の実額から入るなら 葬儀費用「平均120万円」は本当か——公式料金から積み上げて検算する、当日の段取りと連絡先の準備なら 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ です。

ただし必要なことは家庭によって変わります。宗教・宗派の有無、本人の希望、菩提寺との関係、ご遺体の安置先などは、家族ごとに前提が違います。国民生活センターも「どのような葬儀を希望するのか、本人の意向も踏まえて具体的に考え、可能であれば家族等と話し合っておきましょう」と勧めています(同・報告書本文[PDF]3.(1)・2026-08-27に原典で確認)。


※本記事は医療・介護・宗教上の判断を扱うものではありません。統計・相談事例はそれぞれ記載の公的発表・調査に基づきます。

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出典

  • 国民生活センター 依然として多い葬儀サービスの料金トラブル(2026年6月3日公表) (2026-08-27 取得) 発表ページ。2026-08-27にcurlで生取得(EUC-JP)して逐語照合=『年度別相談件数:2019年度は632件、…2024年度は978件、2025年度は917件。』『「高価格・料金」に関する相談割合:…2025年度は52.6%。』『増加傾向で推移しており、年間で900件前後となっています』・消費者へのアドバイス4項目の見出し。相談事例の詳細本文とアドバイスの解説文は発表ページには無く、下の報告書本文[PDF]にある
  • 国民生活センター 依然として多い葬儀サービスの料金トラブル 報告書本文[PDF] (2026-08-27 取得) 報告書本文。2026-08-27にcurlで生取得し逐語照合=消費者へのアドバイス(1)『一般に、残された家族等は、親しい人との死別による悲しみを抱えた中で葬儀の準備をすることになるため、冷静に対応することが難しい状況に置かれがちです。また、ご遺体を速やかに搬送する必要があるなど、短期間で多くのことを決めなくてはいけないこともあります。』『そのため、もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう。』『事前に複数の葬儀社を比較し、内容等をよく確認することが重要です。』/事例1『広告に記載されていた50万円のプランで申し込みしたいと連絡をし』『葬儀社からは120万円のプランを提案された』(2026年1月受付・60歳代男性)/事例3『ところが見積書にはプラン名と一式としか記載がなく、明細が書かれていなかった。』『総額で200万円を超え』(2025年11月受付・60歳代女性)/『契約購入金額の平均は、年々増加傾向にあり、2025年度は約109万円でした。』(図4・n=3,762)
  • 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要[PDF] (2026-08-16 取得) 「死亡数は160万5298人で、前年の157万6016人より2万9282人増加」の記載元
  • 鎌倉新書 【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年) (2026-08-25 取得) 第6回より新しい調査。集計統計が平均から中央値に変わっている(根拠は同社 調査結果全文 https://www.e-sogi.com/guide/60603/ の注記『※第7回(2026年調査)までの調査結果を、中央値で再集計を実施。』)。2026-08-25に原典へ再取得して逐語照合=『②葬儀費用の総額は96.73万円。』『一般葬が122.01万円(前回比+0.63万円)、家族葬が96.39万円(同+6.49万円)、直葬・火葬式が49.56万円(同+1.71万円)、一日葬が74.43万円(同+1.99万円)となりました。』
  • 鎌倉新書 【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年) (2026-08-25 取得) 喪主経験者2,000名。第6回が公表した値は平均。葬儀費用の総額平均118.5万円・形式別42.8万〜161.3万円(2026-08-25に原典で確認)

最終更新: 2026-08-27