親が生きているうちに葬儀を調べるのは不謹慎か
筆者は本記事で扱うサービスの利用経験・利害関係はありません。本記事は自治体・省庁の公式情報と公開データを整理したものです。
不謹慎ではありません。日本では2024年に160万5298人が亡くなっており、その一人ひとりに、あなたと同じように事前に調べた家族と、調べられないまま当日を迎えた家族がいます。そして独立行政法人 国民生活センターは、葬儀について**「前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」と公式に助言しています**。国の相談機関である独立行政法人が「前もって調べること」を推奨している——それがこの問いへの、いちばん短い答えです。
この記事は何かを売るための記事ではありません。深夜にこのページへたどり着いたあなたに、それだけを伝えるための記事です。
いま、あなたに起きていること
親が入院した。要介護になった。医師から説明があった。——そして帰り道、スマホの検索窓に「葬儀 費用」と打ちかけて、指が止まる。
親はまだ生きているのに。
縁起でもない。親の死を待っているみたいだ。誰かに見られたら何と思われるか。そう感じて、検索履歴を消した人もいるはずです。
まず、その感覚自体は、あなたが親を大切に思っている証拠です。どうでもいい相手のことを、後ろめたさを感じながら調べる人はいません。罪悪感は、冷たさではなく愛情の裏返しとして生じています。
それでも調べてよい理由は、感情論ではなく構造にある
1. そのときが来たら、調べる時間はない
人が亡くなってから葬儀までは、一般に2〜3日です。しかも最初の数時間で「ご遺体の搬送先」を決めるよう求められ、翌日には形式・規模・見積もりを決めることになります。
つまり、人生でもっとも冷静でいられない72時間に、人生でほとんど経験のない種類の判断が集中します。事前に調べるとは、この72時間の負荷を、冷静でいられる今のうちに引き受けておくことです。
2. 知らないまま迎えた人が、実際に困っている
国民生活センターに寄せられた葬儀サービスの相談は、2019年度の632件から2024年度978件・2025年度917件と増加傾向で推移しており(同センターは「増加傾向で推移しており、年間で900件前後となっています」と表現しています)、相談の52.6%が「高価格・料金」に関するものです(2025年度)。広告で50万円のプランを見ていたのに120万円のプランを提案された、「家族葬50万円」の表示を見て依頼したところ見積書にプラン名と一式としか記載がなく追加費用で総額200万円を超えた、という事例が公表されています(出典:国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」2026年6月3日公表・2026-08-16確認)。
同じ発表で国民生活センターが挙げる対策の1つ目が、「葬儀の希望やイメージを考えて情報収集をしましょう」です。その解説では「もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」「事前に複数の葬儀社を比較し、内容等をよく確認することが重要です」と述べられています。つまり、あなたが今やろうとしていることは、公的機関が推奨している消費者防衛そのものです。
3. 金額の規模が、準備なしで向き合うには大きすぎる
葬儀費用の平均は総額118.5万円、形式によって42.8万円(直葬・火葬式)から161.3万円(一般葬)まで幅があります(出典:鎌倉新書「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)」喪主経験者2,000名・2026-08-16確認)。
100万円規模の、初めての、やり直しのきかない買い物を、判断力が最も落ちた72時間のなかで行う。——これを準備なしでやることのほうが、むしろ不自然だと思いませんか。
4. 「調べておくこと」は、親のためでもある
もうひとつだけ。葬儀の場で遺族が最も消耗するのは、金額そのものより「これでよかったのか」という迷いです。事前に調べ、できれば親の意向を少しでも知っておくことは、当日のあなたを「迷いなく親を見送ること」に集中させてくれます。それは結果として、親がいちばん望むことのはずです。
罪悪感との付き合い方:ぜんぶ解消しなくていい
ここまで読んでも、後ろめたさが完全には消えないかもしれません。それで構いません。
罪悪感を消してから調べるのではなく、罪悪感を抱えたまま調べていい。 後ろめたさと準備は両立します。2024年の死亡数160万5298人(前年の157万6016人より2万9282人増加。出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」結果の概要・2026-08-16確認)——その見送りの裏には、同じ夜道で同じ検索をした無数の息子・娘がいます。あなたは異常なことをしていません。
なお、「準備しておくべきだ」と言いたいのでもありません。調べる気力が出ない日は、調べなくていい。この記事は「調べてしまった自分」を責めないでほしい、という一点だけのために書かれています。
今夜はここまでで十分:次に読むなら
全部を今夜理解する必要はありません。もし少しだけ先に進むなら、順番は次のとおりです。
- 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ(親と少しだけ話してみようと思ったら)
- 親の危篤を告げられたら——今日できる準備と、しなくていいこと(そのときが近づいたとき、今日できることを知りたいなら)
- 葬儀費用「平均120万円」は本当か——公式料金から積み上げて検算する(お金の実額から先に知りたいなら)
よくある質問(FAQ)
Q1. 親が生きているうちに葬儀社へ相談に行ってもいいのでしょうか? 問題ありません。国民生活センター自身が「前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」と助言しています(出典:上掲・2026-08-16確認)。事前相談は縁起の悪い例外行動ではなく、公的機関が勧めている行動です。
Q2. 調べていることを親に隠すべきですか? 隠しても問題はありませんし、無理に打ち明ける必要もありません。ただ、話せる関係なら、親自身の希望(形式・呼んでほしい人・宗派)を聞けることは大きな助けになります。切り出し方は 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ にまとめています。
Q3. きょうだいに「縁起でもない」と言われました。 感じ方の個人差は埋まらないことがあります。無理に説得せず、「そのときに困らないように調べておく係を引き受けた」と役割の話にすると衝突しにくくなります。調べた内容は、そのときが来れば必ず全員の役に立ちます。
Q4. 縁起が悪いことをしている気がして手が止まります。 「前もって情報収集し、事前相談しておく」ことは国民生活センターが公式に助言している消費者行動です(出典:上掲・2026-08-16確認)。文化的な感覚と、実務上の合理性は別のものです。両方を抱えたままで大丈夫です。
Q5. 具体的に何から調べればいいですか? 「お金の実額」「当日の段取り」「誰に連絡するか」の3つで十分です。お金の実額から入るなら 葬儀費用「平均120万円」は本当か——公式料金から積み上げて検算する、当日の段取りと連絡先の準備なら 「何もわからないまま喪主になる」を避ける——生前に決めておく3つ です。
※本記事は医療・介護・宗教上の判断を扱うものではありません。統計・相談事例はそれぞれ記載の公的発表・調査に基づきます。
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出典
- 国民生活センター 依然として多い葬儀サービスの料金トラブル(2026年6月3日公表) (2026-08-16 取得) 相談件数の年度別推移・「高価格・料金」の割合・消費者へのアドバイス4項目
- 国民生活センター 依然として多い葬儀サービスの料金トラブル 報告書本文[PDF] (2026-08-16 取得) 「前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」の原文
- 厚生労働省 令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要[PDF] (2026-08-16 取得) 「死亡数は160万5298人で、前年の157万6016人より2万9282人増加」の記載元
- 鎌倉新書 【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年) (2026-08-16 取得) 喪主経験者2,000名。葬儀費用の総額平均118.5万円・形式別42.8万〜161.3万円
最終更新: 2026-08-16