葬儀費用「平均120万円」は本当か|公式料金から積み上げて検算する

筆者は本記事で扱うサービスの利用経験・利害関係はありません。本記事は自治体・省庁の公式情報と公開データを整理したものです。

葬儀費用「平均120万円」は本当か:公式料金から積み上げて検算する

一次確認できた最新の大規模調査では、葬儀費用の総額平均は118.5万円(基本料金75.7万円+飲食費20.7万円+返礼品費22.0万円)です。ただしこのうち条例で金額が決まっている公営斎場の施設費は総額の1割未満で、残りは民間が自由に値付けした部分です。「平均120万円」は、比べる相手ではなく分解する対象です。

まず、その「120万円」の出所を確認する

葬儀費用の平均として広く引用されている数字のうち、本記事で一次確認できたのは次のものです。

葬儀費用の総額は118.5万円で前回より約8万円増加

(出典:鎌倉新書「【第6回】お葬式に関する全国調査(2024年)」・2026-08-17確認)

調査の条件は次のとおりです。数字を使うときは、この条件ごと引用してください。

調査対象2022年3月〜2024年3月に喪主(または喪主に準ずる立場)を経験した、全国の40歳以上の男女
有効回答数2,000件
調査期間2024年3月1日〜3月4日
調査方法インターネット調査(調査協力:クロス・マーケティング)

つまりこれは国の統計ではなく、葬儀情報サイトを運営する上場企業(東証プライム・6184)が2年に1度実施している自主調査です。公的な葬儀費用統計は存在しないため、本サイトでもこの調査を「相場の目安」としてのみ使い、実額の根拠には自治体の公式料金を使います

① 118.5万円の内訳:固定費と変動費に割れている

同じ調査は、総額を3つに分解しています。

区分平均中身(調査の定義)
基本料金75.7万円斎場利用料、火葬場利用料、祭壇、棺、遺影、搬送費など、葬儀を行うための一式(固定費
飲食費20.7万円通夜ぶるまい、告別料理などの飲食(変動費
返礼品費22.0万円香典に対するお礼の品物(変動費
総額118.5万円※0.1万円のズレは小数点第2位以下の和によるもの

(出典:鎌倉新書・上掲調査・2026-08-17確認)

ここが最初の分岐点です。**飲食費と返礼品費の合計42.7万円は、総額の約36%を占めていて、しかも参列人数に比例します。**調査の注記にも「飲食費、返礼品費はひとり当たりかかる費用のため、参列人数に比例して変動します」とあります。

つまり「葬儀費用を下げる」と言ったとき、実際に効くのは値切りではなく参列人数を決めることです。そして参列人数を決めるとは、形式を決めるということです。

② 形式を変えると総額はこう動く

同じ調査の形式別の数字です。「最も回答が多い価格帯」が平均とズレていることに注目してください。

形式総額(平均)最も回答が多い価格帯実施割合
一般葬161.3万円120万円以上〜140万円未満30.1%
家族葬105.7万円60万円以上〜80万円未満50.0%
一日葬87.5万円20万円以上〜40万円未満10.2%
直葬・火葬式42.8万円20万円以上〜40万円未満9.6%

(出典:鎌倉新書・上掲調査・2026-08-17確認。形式の定義は同調査による。一般葬=通夜・葬儀・告別式があり参列者が知人・地域・職場など幅広い/家族葬=通夜・葬儀・告別式があり参列者は親族や近親者/一日葬=通夜がなく告別式のみ/直葬・火葬式=宗教儀式のない火葬のみのお別れ)

読み取れることが2つあります。

  1. いちばん多く行われているのは家族葬(50.0%)で、その平均は105.7万円。「平均120万円」は全形式をならした数字なので、実際に多くの人が経験しているのは、それより1割ほど低い水準です(105.7万円÷118.5万円=約0.89)
  2. **家族葬は平均105.7万円なのに、最も回答が多い価格帯は60万〜80万円未満。平均が最頻値より高いのは、高額側に長い裾があるということです。「平均105.7万円だからうちも100万円くらい」ではなく、「60万〜80万円で収まっている人が最も多いが、上に外れる人がいる」**と読むのが正確です

家族葬の内訳をさらに分解したものは 家族葬の相場「40万〜130万円」のバラつきを検算する にまとめています。

③ 検算:条例で決まっている部分は総額の何%か

ここからが本サイトの検算です。118.5万円のうち、自治体の条例で金額が決まっていて誰が頼んでも同じになる部分はいくらでしょうか。公営斎場で通夜・告別式まで行った場合の施設費を積みます(自社DB/各自治体の公式ページから取得・2026-08-16確認)。

都市式場火葬料待合・休憩室施設費 計118.5万円に占める割合
名古屋市(市立斎場に式場データなし)5,000円4,000円9,000円約0.8%
大阪市(北斎場・大式場昼間1回)40,000円10,000円50,000円約4.2%
横浜市(戸塚斎場)50,000円12,000円5,000円67,000円約5.7%
東京23区(臨海斎場・組織区民)56,000円44,000円20,000円120,000円約10.1%

※割合は「施設費 計 ÷ 1,185,000」を計算した値です。大阪市の式場使用料は昼間1回の額で、夜間1回は別料金です。臨海斎場の葬儀施設は式場のほかに遺族等控室・会葬者控室があり、3つの合計は組織区民で100,000円になります(上表は式場のみを計上)。

**結論:総額118.5万円のうち、条例で決まっているのは0.8%〜10.1%です。**逆に言えば、残りの約90〜99%は民間の値付け——祭壇・棺・遺影・搬送・人件費・飲食・返礼品です。ここは会社ごとに違い、比較の対象になります。

だから見積書を見るときの最初の一手は、値引き交渉ではありません。「この見積のうち、斎場と火葬場に払う分はいくらですか」と分けてもらうことです。分けてもらえれば、残りが比較可能な部分だとわかります。

④ 「一式」と書かれた見積書が実際にトラブルになっている

内訳を分けてもらう、という話には実害の裏づけがあります。

独立行政法人 国民生活センターがまとめた葬儀サービスの相談件数は、2019年度632件から2022年度951件、2024年度978件、2025年度917件と増加傾向で推移しています。そのうち「高価格・料金」に関する相談の割合は**2019年度33.2%から2025年度52.6%**へと上がりました(出典:国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」2026年6月3日公表・2026-08-17確認)。

同じ発表の相談事例には次のものがあります。

  • 「家族葬50万円」との表示を見て葬儀社に依頼したところ、十数種類のプラン表を提示され、案内されたプランは140万円だった。見積書にはプラン名と一式としか記載がなく、明細が書かれていなかった。会食やその他の追加費用が発生し、総額で200万円を超えた(2025年11月受付・60歳代女性)
  • 一日葬は約30万円とのチラシを見て依頼したところ、約80万円の見積もりを出された。請求書の明細にはマイクの使用料や花の搬入搬出代、仏具の搬入搬出代、仏衣を着せるための費用等が含まれていた(2025年5月受付・60歳代男性)

(出典:国民生活センター・上掲報告書本文・2026-08-17確認)

国民生活センターの消費者へのアドバイスの3つ目は「見積書は必ず受領し、内容(明細)をよく確認しましょう」で、「特に、契約に含まれている項目は何か、含まれていない項目は別料金なのか、追加サービスの内容や料金も含め、よく確認しましょう」と続きます(同上)。

⑤ 総額から引ける2つの給付

最後に、総額から確実に引ける数字があります。葬祭費です。故人が加入していた健康保険から、葬祭を行った人に支給されます。

都市国民健康保険後期高齢者医療
東京23区(新宿区の例)70,000円70,000円
横浜市50,000円50,000円
大阪市50,000円50,000円
名古屋市50,000円50,000円
札幌市30,000円30,000円
福岡市30,000円30,000円

(自社DB/各自治体・広域連合の公式ページから取得・2026-08-16確認。→ 葬祭費はいくらもらえるか——6都市の実額一覧(3万〜7万円)葬祭費の申請期限は2年——時効で消える給付金の申請手順

**どちらも申請制で、申請しなければ1円も入りません。**平均118.5万円という数字の前で消耗するより先に、30,000〜70,000円の申請を取りこぼさないほうが先です。なお、申請すれば必ず支給されるわけではなく、支給されない場合もあります(→ 葬祭費が出ないケース——他保険優先・第三者行為・葬祭なしの扱い)。

検算のまとめ:「平均120万円」の正しい使い方

  1. 一次確認できた平均は118.5万円(内訳=基本料金75.7万+飲食20.7万+返礼品22.0万)。国の統計ではなく民間の自主調査
  2. 総額の約36%は参列人数に比例する変動費。形式を決めることが金額を決めること
  3. 条例で決まっている施設費は総額の0.8〜10.1%。残りは比較・検討の対象
  4. 最も多い家族葬でも、最頻価格帯は60万〜80万円未満。「平均」を自分の予算にしない
  5. 葬祭費30,000〜70,000円は申請しなければ1円も出ない(申請しても支給されないケースはある → 葬祭費が出ないケース——他保険優先・第三者行為・葬祭なしの扱い

よくある質問(FAQ)

Q1. 葬儀費用の公的な統計はないのですか? 本記事の調査時点で、葬儀費用の総額を継続的に集計した国の統計は確認できませんでした。そのため相場は民間の自主調査を、実額は自治体の公式料金(条例)を使い分けています。数字の性質が違うので、両者を混ぜて「相場より高い/安い」とは判定できません。

Q2. 「平均120万円」より安く抑えることはできますか? 形式によって平均は大きく変わります(一般葬161.3万円/家族葬105.7万円/一日葬87.5万円/直葬42.8万円・上掲調査)。ただし直葬を実施した人で「後悔していることはない」と答えたのは38.7%にとどまり、「通夜をしなかったこと」「火葬場でのお別れの時間が短かったこと」という後悔が挙げられています(同調査)。金額だけで選ぶ話ではありません(→ 直葬・火葬式の実額——公営火葬場を使うと総額いくらか)。

Q3. 見積書のどこを見ればいいですか? 最初に「斎場・火葬場に払う分」と「葬儀社に払う分」を分けてもらってください。前者は条例で決まっているので比較しても差が出ません。差が出るのは後者です。国民生活センターも「契約に含まれている項目は何か、含まれていない項目は別料金なのか」を確認するよう助言しています(2026-08-17確認)。

Q4. 香典で費用は相殺できますか? 本記事で一次確認できた調査には香典収入の平均額の記載がありません。確認できていない数字なので、本サイトでは金額を示しません。ただし返礼品費(平均22.0万円)は香典に対するお礼の品物であり、香典が増えれば返礼品費も増える関係にあることは調査の定義から読み取れます。

Q5. 事前に見積もりを取っておくと安くなりますか? 金額が下がると断言できる公的データは確認できませんでした。ただし国民生活センターは「もしもの時に慌てることのないよう、前もって葬儀について幅広く情報収集を行い葬儀社へ事前相談しておきましょう」「事前に複数の葬儀社を比較し、内容等をよく確認することが重要です」と助言しています(上掲報告書本文・2026-08-17確認)。比較のための時間を作る効果は公的に推奨されている、という言い方が正確です(→ 親が生きているのに葬式を調べるのは不謹慎か)。


※調査データ・料金・給付額は改定されます。本記事の民間調査データは2026年8月17日、火葬料・施設使用料・葬祭費は2026年8月16日時点で各公式ページから確認したものです。利用時は必ず最新の公式情報でご確認ください。本記事は特定の葬儀社・斎場の推奨や批判を目的とするものではありません。

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出典

最終更新: 2026-08-17