会社員だった親が亡くなったら|健康保険の埋葬料5万円と退職後3か月ルール

筆者は本記事で扱うサービスの利用経験・利害関係はありません。本記事は自治体・省庁の公式情報と公開データを整理したものです。

会社員だった親が亡くなったら:健康保険の埋葬料と退職後3か月ルール

親が会社員のまま亡くなった場合、給付は市区町村の葬祭費ではなく健康保険の埋葬料で、協会けんぽの額は5万円です。さらに、退職して健康保険の資格を失ってから3か月以内に亡くなったときも、市区町村ではなく退職前の健康保険から支給されます。この3か月ルールを知らないと、国民健康保険の窓口で「対象外です」と言われて終わってしまいます。

① 埋葬料と埋葬費は別物(金額の決まり方が違う)

まず用語を分けます。名前が似ていますが、金額の性質がまったく違います。

誰がもらうか金額
埋葬料被保険者に生計を維持されていた人定額(協会けんぽ 5万円)
埋葬費生計を維持されていた人がいないとき、実際に埋葬を行った人実費(上限 5万円)

協会けんぽの公表はこうです。

被保険者に生計を維持されていた人に、申請により「埋葬料」として5万円が支給されます。 被保険者に生計を維持されていた人がいないときは、実際に埋葬を行った人(費用を支払った人)に、申請により「埋葬費」として**埋葬に要した費用(上限5万円)**が支給されます。

(全国健康保険協会「ご本人・ご家族が亡くなったとき(埋葬料・埋葬費)」・出典:協会けんぽ公式ページ・2026-08-17確認)

条文も同じ構造です。

被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものに対し、埋葬料として、政令で定める金額を支給する。 2 前項の規定により埋葬料の支給を受けるべき者がない場合においては、埋葬を行った者に対し、同項の金額の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。

(健康保険法第100条・出典:e-Gov法令検索・2026-08-17確認)

実務上の意味は明確です。「埋葬料」なら領収書の額に関係なく定額5万円「埋葬費」なら実際にかかった額まで(5万円が上限)。埋葬費で申請する場合は、かかった費用の領収書がそのまま支給額を左右します。

なお条文が「政令で定める金額」としているとおり、5万円は法律本文に書かれた数字ではありません。本記事では保険者である協会けんぽ自身が公表している額として引用しています。

② 退職後3か月ルール:資格を失っていても出ることがある

いちばん取りこぼされるのがここです。協会けんぽは、資格喪失後でも申請できる場合を3つ挙げています。

次の要件のいずれかに該当している場合に資格喪失後の被保険者の埋葬料(費)の申請が可能です。(資格喪失後の給付) ・被保険者が資格喪失後3か月以内に亡くなったとき。 ・被保険者が傷病手当金または出産手当金の資格喪失後の継続給付を受けている期間に亡くなったとき。 ・被保険者が傷病手当金または出産手当金の資格喪失後の継続給付を受けなくなった日後3か月以内に亡くなったとき。

(全国健康保険協会・上掲ページ・2026-08-17確認)

これは条文の写しではなく、条文どおりの案内です。健康保険法第105条第1項は次のように定めています。

前条の規定により保険給付を受ける者が死亡したとき、同条の規定により保険給付を受けていた者がその給付を受けなくなった日後三月以内に死亡したとき、又はその他の被保険者であった者が被保険者の資格を喪失した日後三月以内に死亡したときは、被保険者であった者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものは、その被保険者の最後の保険者から埋葬料の支給を受けることができる。

(健康保険法第105条第1項・出典:e-Gov法令検索・2026-08-17確認)

「その被保険者の最後の保険者から」——つまり、退職して国民健康保険に切り替えていても、3か月以内なら請求先は退職前の健康保険ということです。

③ 市区町村の葬祭費とは二者択一(両方はもらえない)

市区町村の葬祭費は、当サイトが確認した6都市で30,000〜70,000円です(→ 葬祭費はいくらもらえるか——6都市の実額一覧(3万〜7万円))。埋葬料の5万円と近い水準ですが、**両方は受け取れません。**3か月ルールは、裏側から見ると「国民健康保険の葬祭費が出ないケース」でもあります。自治体側もそう書いています。

大阪市

他の健康保険などから葬祭費に相当する給付(埋葬料等)を受けることができる場合、大阪市国民健康保険からは葬祭費の支給はしません。 会社などの健康保険・船員保険・共済組合・私学共済に加入されていた被保険者(組合員)が、退職してから3か月以内に亡くなったときは、加入されていた健康保険などから埋葬料等が支給されます。

(大阪市「葬祭費の支給」・2026-08-16確認)

名古屋市

亡くなった日からさかのぼって3か月以内に他の健康保険に加入していた場合、そちらの健康保険から葬祭費に相当する支給を受けられる場合があります。他の健康保険から支給を受けたときは、国民健康保険の葬祭費は受けられません。

(名古屋市「国民健康保険における葬祭費の支給申請」・2026-08-16確認)

横浜市は、以前の健康保険から埋葬料が出る類型を3つ挙げています。

・死亡前3か月以内に以前に加入していた健康保険に、被保険者本人として加入していた場合 ・死亡時または死亡前3か月以内に、以前に加入していた健康保険から、傷病手当金の継続給付を受けていた場合 ・死亡時または死亡前3か月以内に、以前に加入していた健康保険から、出産手当金の継続給付を受けていた場合

(横浜市「葬祭費の支給」・2026-08-16確認)

新宿区も「他の健康保険から国保に加入して3カ月経過していない場合、国保加入前の健康保険から葬祭費に相当するものが支給される場合がありますのでご確認ください」と案内しています(2026-08-16確認)。

**4自治体すべてが同じことを言っています。**親の退職日と死亡日の間隔が3か月以内なら、まず退職前の健康保険に確認してください。

④ 判断の順序:この4問で申請先が決まる

  1. 親は75歳以上だったか。→ はいなら後期高齢者医療の葬祭費(→ 後期高齢者医療の葬祭費——75歳以上の親を送ったときの実額)。この場合、健康保険の被保険者ではありません
  2. 亡くなった時点で会社員(または任意継続)だったか。→ はいなら健康保険の埋葬料。窓口は協会けんぽの都道府県支部、または勤務先の健康保険組合
  3. 退職から3か月以内だったか。→ はいなら退職前の健康保険(健康保険法第105条第1項)
  4. いずれも違うか。→ 国民健康保険の葬祭費(→ 葬祭費はいくらもらえるか——6都市の実額一覧(3万〜7万円)

判断に迷ったら、先に健康保険側に問い合わせるのが手戻りが少ない順序です。健康保険から出ないと確認できれば、国民健康保険の窓口はその前提で受け付けられます。

⑤ 健康保険組合の場合は、5万円で終わりとは限らない

親の勤務先が健康保険組合に加入していた場合、法定の埋葬料に加えて組合独自の給付がある場合があります。根拠は条文にあります。

保険者が健康保険組合である場合においては、前条各号に掲げる給付に併せて、規約で定めるところにより、保険給付としてその他の給付を行うことができる。

(健康保険法第53条・出典:e-Gov法令検索・2026-08-17確認)

「規約で定めるところにより」なので、あるかないか・いくらかは組合ごとに違います。当サイトでは個別の組合の付加給付額を確認していません。健康保険証(または資格情報のお知らせ)に記載された組合名で問い合わせてください。

⑥ 期限は2年。ただし起算点は葬祭費と少し違う

健康保険の給付にも時効があります。

保険料等を徴収し、又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。

(健康保険法第193条第1項・出典:e-Gov法令検索・2026-08-17確認)

数字は国民健康保険の葬祭費と同じ2年です。ただし、市区町村が「葬祭を行った日の翌日から2年」と案内しているのに対し、埋葬料・埋葬費の起算点は給付の性質(定額の埋葬料か、実費の埋葬費か)で考え方が分かれ得ます。**申請先の保険者に起算日を確認してください。**時効の全体像は 葬祭費の申請期限は2年——時効で消える給付金の申請手順 にまとめています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 親は年金生活で、10年前に退職しています。埋葬料は出ますか? 出ません。3か月ルールの範囲を超えているため、原則として国民健康保険(75歳未満)または後期高齢者医療(75歳以上)の葬祭費になります(→ 葬祭費はいくらもらえるか——6都市の実額一覧(3万〜7万円)後期高齢者医療の葬祭費——75歳以上の親を送ったときの実額)。

Q2. 親と別居していました。埋葬料はもらえますか? 埋葬料の要件は「被保険者に生計を維持されていた人」です。同居しているかどうかではなく、生計維持の関係があったかどうかで判断されます。生計を維持されていた人がいない場合は、実際に埋葬を行った人が「埋葬費」として実費(上限5万円)を申請できます(協会けんぽ・2026-08-17確認)。判断は保険者が行うため、事情を伝えて相談してください。

Q3. 埋葬費で申請する場合、何が「埋葬に要した費用」ですか? 協会けんぽのページに費目の一覧は掲載されていませんでした。当サイトでは範囲を断定できません。申請先の保険者に、領収書のどの費目が対象になるかを確認してください。

Q4. 親が扶養に入れていた家族が亡くなった場合は? 被扶養者が亡くなったときは、被保険者に「家族埋葬料」が支給されます(健康保険法第113条・2026-08-17確認)。協会けんぽも「被保険者に、申請により『埋葬料』として5万円が支給されます」と案内しています。ただし同ページには「被扶養者であった方が資格喪失後に亡くなった場合は、家族埋葬料は受けられません」との注記もあります(2026-08-17確認)。

Q5. 労災で亡くなった場合はどうなりますか? 健康保険法第55条第1項は、労働者災害補償保険法などによりこれに相当する給付を受けることができる場合には、埋葬料等の支給を「行わない」と定めています(2026-08-17確認)。業務上・通勤途上の事故が関係する場合は、健康保険ではなく労災保険側の手続きになります。詳細は勤務先および労働基準監督署にご確認ください。支給されない類型の整理は 葬祭費が出ないケース——他保険優先・第三者行為・葬祭なしの扱い にあります。


※金額・要件は改定されます。本記事の協会けんぽの記載は2026年8月17日、自治体の記載は2026年8月16日、条文は2026年8月17日時点で確認したものです。健康保険組合の付加給付の有無・額は組合ごとに異なり、当サイトでは確認していません。最終的な可否は加入していた保険者にご確認ください。

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出典

  • 全国健康保険協会 ご本人・ご家族が亡くなったとき(埋葬料・埋葬費) (2026-08-17 取得) 「被保険者に生計を維持されていた人に、申請により『埋葬料』として5万円が支給されます」「生計を維持されていた人がいないときは、実際に埋葬を行った人(費用を支払った人)に、申請により『埋葬費』として埋葬に要した費用(上限5万円)が支給されます」。資格喪失後の給付の3要件も同ページ
  • 健康保険法(大正11年法律第70号)e-Gov法令検索 (2026-08-17 取得) 第100条(埋葬料=政令で定める金額/第2項=埋葬を行った者への実費相当額)・第105条(資格喪失後の死亡に関する給付=3か月以内)・第113条(家族埋葬料)・第53条(健康保険組合の付加給付)・第55条(他の法令による保険給付との調整)・第193条(2年の時効)
  • 大阪市 葬祭費の支給 (2026-08-16 取得) 「他の健康保険などから葬祭費に相当する給付(埋葬料等)を受けることができる場合、大阪市国民健康保険からは葬祭費の支給はしません」「退職してから3か月以内に亡くなったときは、加入されていた健康保険などから埋葬料等が支給されます」
  • 横浜市 葬祭費の支給 (2026-08-16 取得) 「死亡前3か月以内に以前に加入していた健康保険に、被保険者本人として加入していた場合」ほか3類型で、以前に加入していた健康保険から埋葬料が支給される旨を明記
  • 名古屋市 国民健康保険における葬祭費の支給申請 (2026-08-16 取得) 「亡くなった日からさかのぼって3か月以内に他の健康保険に加入していた場合、そちらの健康保険から葬祭費に相当する支給を受けられる場合があります。他の健康保険から支給を受けたときは、国民健康保険の葬祭費は受けられません」
  • 新宿区 葬祭費(0歳〜74歳) (2026-08-16 取得) 「他の健康保険から国保に加入して3カ月経過していない場合、国保加入前の健康保険から葬祭費に相当するものが支給される場合がありますのでご確認ください」

最終更新: 2026-08-17